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系統樹ハンターの狩猟記録

旋律変遷の系譜

安田寛『バイエルの謎:日本文化になったピアノ教則本』(2012年5月刊行,音楽之友社,東京,本体価格2,400円,ISBN:9784276212589版元ページブック・アサヒ・コム).8月1日付けの朝日新聞書評(川端裕人評)を読んで,さっそくこの音友本を買わないとと思い立ったしだい.こういう感じの本はとても好きです.川端さん経由で,著者の安田さんとつぶやき合う.いま,〈仰げば尊し〉の音楽系譜について調査されているとのこと.とてもおもしろそう.音符の連なりとしての旋律は塩基の連なりとしてのDNAと同じく「配列情報列」なので,前例のある写本や言語の文字情報源のように,分子系統学的な手法を使えるのではないかと推測する.たとえば,Steve Reich の「最小音楽」の旋律変異は,かなりきれいな共有派生形質をもっているので(ホモプラシー無し),旋律系統樹を描くことは困難ではないだろう.他方,Carl Nielsen のようなフクザツな音曲の場合,セミラティスのようなネットワーク構造になるようだ:

  • Richard S. Parks 1994. Pitch Structure in Carl Nielsen's Wind Quartet. Pp. 541 - 596 in: Mina Miller (ed.) The Nielsen Companion. Faber & Faber, London.
  • 小田淳一 2008「ネットワーク概念による旋律比較」日本認知科学会〈文学と認知・コンピュータII〉研究分科会資料集 16G-08. 1-8 (2008) → pdf

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