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系統樹ハンターの狩猟記録

民話の文化系統学

Robert M. Ross, Simon J. Greenhill, and Quentin D. Atkinson

Population structure and cultural geography of a folktale in Europe

Proc. R. Soc. B | Published online February 6, 2013 | doi: 10.1098/rspb.2012.3065 | abstract | html | pdf [open access]

この論文では,ヨーロッパに広く伝承されているある昔話の文化的変異とそれを伝える人間集団の遺伝的変異とを系統学的に照らしあわせた.この昔話700バージョン間の系統関係は NeghborNet を用いた系統ネットワークとして,一方,ヨーロッパに分布する38の人間集団の分化は AMOVA を用いて解析している.

民話の系統については,比較法(the comparative method)にからめて,以前こう書いたことがある:


歴史推定のための比較法を確立した比較文献学や比較言語学は,さらに民俗学の方法論にも大きな影響を残したと岩竹(1999)は指摘しています.確かに,「民俗学は現在事象の分類比較によって,過去の変遷推移を跡づけ,その原初形態をもたづねようとする」(堀 1976:岩竹 1999に引用)という学問目標の設定の中に,比較法のモチーフを読み取ることはきわめて容易です.たとえば,フィンランド学派民俗学の始祖であるカールレ・クローンの『民俗学方法論』(クローン 1940)には,民間伝承(民話)の基本様式を再建するために地理的に多岐にわたる類似伝承を相互比較するという基本方針が述べられています.これは,まさに比較法の精神そのものです.(三中信宏系統樹思考の世界』第2章第3節, pp. 109-110)

  • 岩竹美加子 1999. 「重出立証法」・「方言周圏論」再考(1)〜(3). 未来, (396): 13-21; (397): 6-16; (399): 30-35.
  • 堀一郎 1976. 民俗学的研究に於ける時代区分の問題−民俗学的領域と方法. 所収:日本文学研究資料刊行会編『柳田国男』有精堂.
  • カールレ・クローン 1940. 民俗学方法論. 関敬吾訳,岩波書店,東京.

 

上の論文は結論としてこう述べている:


While there exist important disanalogies between cultural and biological processes, particularly with regard to micro-evolutionary transmission mechanisms [33,59], our findings suggest that methods and theory from population genetics can nonetheless be usefully applied to characterize population structure and variation in cultural packages such as folktales.


 

分子系統学と文化系統学の analogy と disanalogy の見極めは興味深い.

 

[解説記事]ナショナルジオグラフィック ニュース「昔話は遺伝子よりも伝わりにくい」(2013年2月7日).

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