archief voor stambomen

系統樹ハンターの狩猟記録

系統樹の森:系統樹の森で学んだこと

三中信宏(監修)・杉山久仁彦(著)『系統樹の森:系統樹の森で学んだこと』(2014年11月29日刊行,非売品,60 pp.)

2014年11月25日(火)~12月7日(日)に谷岡学園梅田サテライトオフィス CURIO-CITYグランフロント大阪A・16階)で開催された〈系統樹の森:芸術工学とインフォグラフィックス〉展にあわせて,神戸芸術工科大学セミナーテキストとしてつくられたフルカラー版ブックレット.1000部限定の非売品.正誤表が添付されている.

【目次】
監修のことば:世界を覆い尽くす系統樹の森 — サイエンスとアートの間には系統樹の深い森があった[三中信宏] 2
はじめに 6
系統樹の変遷 8
用語の理解 10
生命の樹 12
セフィロートの樹 14
梯子図の諸相 16
人生の階段 18
最初期の樹形図 20
神聖家系図 22
つなぎ絵の伝統 26
ルルスの知恵の樹・梯子・階段図 28
家系図の樹形 30
生物の分類図 32
ダーウィンの樹形図 34
エルンスト・ヘッケルの系統樹 36
言語の樹の諸相 38
19世紀に急進したダイアグラムと系統樹 40
アルファベットと活字の樹 42
生物進化の系統樹はどう描けば良いのか 44
様々な無生物の系譜 49
漫画やゲームの系統樹 50
情報の可視化 52
参考文献 60

 

f:id:leeswijzer:20141214052528j:plain

Aristotle's Ladder, Darwin's Tree

J. David Archibald
Aristotle's Ladder, Darwin's Tree: The Evolution of Visual Metaphors for Biological Order
(2014年8月刊行,Columbia University Press, New York, xiv+242 p., ISBN:9780231164122 [hbk] → 目次版元ページ

8月に出たばかりの系統樹図像学の新刊が着便.判型が大きい.探書アンテナがそちら方面に向けられているせいか,ここのところこういう本ばっかりヒットしてくる.

 

f:id:leeswijzer:20141103172248j:plain

企業組織の系統図(1855年)

Wired Design

The First Org Chart Ever Made Is a Masterpiece of Data Design

http://www.wired.com/design/2014/03/stunningly-complex-organization-chart-19th-century/

1855年につくられた New York and Erie Railroad 社の組織系統図「Diagram representing a plan of organization」.企業組織を系統樹的に可視化したもっとも古い例とのこと

f:id:leeswijzer:20140319115216j:plain

「食べるラー油」の系統樹

Daily Portal

食べるラー油が成熟している」(2013年10月16日)
http://portal.nifty.com/kiji/131016162070_1.htm

すでにブームが過ぎた「食べるラー油」の系統発生が進んでいるという記事.「食べるラー油達の系統樹」を見ると,2009年の桃屋のラー油をルーツとする系統樹がきれいに描かれている.

 

f:id:leeswijzer:20140228084610j:plain

Linux の系統樹

File:Linux Distribution Timeline.svg (29 October 2012)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1b/Linux_Distribution_Timeline.svg

出典:WikipediaLinux distribution

あと二ヶ月弱で命脈を絶たれる Windows XP 機の再利用のひとつの選択肢として Linux 導入を考えているのだが,Linux そのもののあまりの多様化にクラクラしている.たかだか20年間なのに,この分岐的な適応放散はすごいなあ.

 

f:id:leeswijzer:20140212052548p:plain

パン袋クリップ(Occlupanid)製造元

文化系統学では「Occlupanid」と命名されている「食パン袋クリップ」の製品名は「バッグ・クロージャー(bag closure)」と呼ぶらしい.国内で製造しているのは埼玉にある「クイック・ロック・ジャパン」一社のみとのこと.親会社である〈Kwik Lok〉のサイトには製品カタログを含めていろいろな情報が載っている.

現代芸術の系統樹:Miguel Covarrubias, Alfred Barr, Ad Reinhardt

Ad Reinhardt こと Adolph Frederick Reinhardt が描く「現代芸術系統樹」は,Astrit Schmidt-Burkhardt の芸術系譜学本『Stammbäume der Kunst : Zur Genealogie der Avantgarde』(2005年刊行,Akademie Verlag, Berlin, ISBN:3050040661目次)で初めて見た.アメリカ現代芸術の系譜を視覚化したこのツリーはとても印象に残ったので,その後,『系統樹曼荼羅』で取り上げ,来週いっぱいまで開催中の竹尾見本帖〈系統樹の森〉でも展示している.

この芸術系統樹の元典は:Ad Reinhardt 1946. How to Look at Modern Art in America. P.M., vol.6, no.299, 2 July 1946, p.13.いま調べたら,彼の図版はすでにインターネットで公開されていることを知った:

ついでに,他の芸術系統樹に関する文献をいくつか挙げておく.Ad Reinhardt の先駆となる Miguel Covarrubias のアメリカ芸術系統樹:Miguel Covarrubias 1933. The Tree of modern Art – Planted 60 Years Ago. Vanity Fair, vol. 40, no.3, May 1933, p.36 および Nathaniel Pousette-Dart 1938. A Tree Chart of Contemporary American Art. Art and Artistes of Today, vol.1, no.6, June-July 1938, p.2 については,下記の解説記事に詳述されている:

また,有名な Alfred Barr の芸術系譜ネットワーク「Barr's diagram」とそれを継承した「Ferel's diagram」については下記を参照:

 

f:id:leeswijzer:20120205113549j:plain

出典:Miguel Covarrubias 1933.


f:id:leeswijzer:20100706154559j:plain

出典:Alfred Barr 1936.


f:id:leeswijzer:20131116110423p:plain

出典:Ad Reinfardt 1946.

「赤ずきん」民話の系統樹

Jamshid J. Tehrani

The Phylogeny of Little Red Riding Hood

http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0078871

PLoS ONE 8(11): e78871. 13 November 2013, doi:10.1371/journal.pone.0078871

PAUP*, MrBayes, SplitsTree を用いた「赤ずきん」テクストの系統分析.

この論文の解説記事:AFPBB News「民話「赤ずきん」の進化を系統樹で解明、英研究」(2013年11月15日)※この記事の記者さんは勉強不足じゃね?


【追記(16 Nov. 2013)】

Science 誌の解説記事:The Evolution of Little Red Riding Hood | Science/AAAS | 14 November 2013. 

竹尾見本帖展示〈系統樹の森:系統樹を介して樹と人間と知識の諸相を鑑賞する〉

竹尾見本帖本店展示
系統樹の森:系統樹を介して樹と人間と知識の諸相を鑑賞する
  http://www.takeo.co.jp/site/event/central/201308.html
  企画構成:杉浦康平
  図像監修+解説:三中信宏
  図像構成+ディレクション:杉山久仁彦
  主催:株式会社竹尾

開催期間:2013年10月9日(水)~11月22日(金)
開催場所:竹尾見本帖本店2F (〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-18-3 → 地図).

「紙とインフォグラフィクス」を冠する今回の企画展示は,生命の樹系統樹をめぐる観念史を振り返りつつ,情報とデータの可視化を目指す現代のインフォグラフィクスと「紙」を媒体とする最新の印刷技術がもたらす質感とイマジネーションの可能性を探る.展示会場では,古今東西のさまざまな系統樹を先端的技法を用いて印刷した作品とともに,チャールズ・ダーウィンやエルンスト・ヘッケルの原書を含む歴史的資料を展示する.

なお今回の展示に付随する企画のひとつとしてスペシャルトーク(予約制)が予定されている:「生命の樹から系統樹へ/系統樹の森を逍遥して想うこと」出演:杉浦康平三中信宏・杉山久仁彦.2013年10月25日(金)18:30~20:00@竹尾見本帖本店2F(→ 事前申込).

 

f:id:leeswijzer:20130831083105j:plain

金管楽器コルネットの系統発生(続)

前記事「金管楽器コルネットの系統発生」に書いたように,アメリカ自然史博物館の三葉虫学者 Niles Eldredge は,私生活ではジャズ・トランペッターでもあり,19世紀のアンティーク・コルネットのコレクションはすでに500本もあるそうな.下記のロング・インタヴュー記事を見つけた:

 

Belinda Barnet,
FCJ-017 Material Cultural Evolution: An Interview with Niles Eldredge
The Fibreculture Jornal (2004)
http://three.fibreculturejournal.org/fcj-017-material-cultural-evolution-an-interview-with-niles-eldredge/

 

蒐集慾,おそるべし.

 

f:id:leeswijzer:20130724173114j:plain

Copyright © 2012-2014 MINAKA Nobuhiro. All rights reserved