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archief voor stambomen

系統樹ハンターの狩猟記録

金管楽器コルネットの系統発生

アメリカ自然史博物館の三葉虫学者 Niles Eldredge  http://www.nileseldredge.com/NELE.htm が十年ほど前から,金管楽器コルネットの「系統樹」の推定を手がけている.ある論文集 http://cse.niaes.affrc.go.jp/minaka/PA/MA.html への寄稿で,Eldredgeは,分岐学が生物のみならず言語や写本の系統推定の方法論として注目されるようになった歴史的経緯を振り返り,cultural phylogeny を復元する上での方法論的な問題点のいくつかを指摘する.彼は,生物系統樹の場合は形質の変換系列として共有派生形質の相同性が仮定できることが多いが,文化系統樹の場合はそうはいかないケースが少なくないだろうという:


But often in design history such is not the case. Rather, humans invent alternative solutions to the same problem — a sort of planned, deliberate convergence that nonetheless purposefully does not end up in confusingly similar states. This is homoplasy of a rather different sort. (p. xvi)


文化系統では表現型として“似ていない”ホモプラジーが多いという例の一つとして,彼自身が調べた楽器コルネットの「進化」に言及している(N. Eldredge 2003. Mme F. Besson and the early history of the Périnet valve. The Galpin Society Journal, 56: 147-151).The Galpin Society というのは「楽器史」を研究するコミュニティーのようだ.この論考で,彼は,ふつうよく見るトランペットの「ヴァルヴ」の“系統発生”を考察している(みたい:未見).金管の機能長を変更する「ヴァルヴ」の機構 — ピストンかそれともロータリーか — は表形的には似ていないがホモプラジーだと彼は結論している(のだろう).こういうネタはとてもおもしろい.

  • Niles Eldredge 2003. Mme F. Besson and the early history of the Périnet valve. The Galpin Society Journal, 56: 147-151 abstract
  • Ilya Tëmkin and Niles Eldredge 2007. Phylogenetics and material cultural evolution. Current Anthropology, 48(1): 146-153 pdf

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